「便所の神様」と言えば、植村花菜さんが歌う『トイレの神様』がヒットし話題になりました。
小さい頃おばあちゃんと暮らしていたときの思い出や、おばあちゃんの死が歌われています。その中に、トイレ掃除が苦手な幼い頃の植村さんにおばあちゃんが言った歌詞があります。
『トイレには、それはそれはキレイな女神様がいるんやで。だから毎日キレイにしたら、女神様みたいにべっぴんさんになれるんやで』このことをおばあちゃんから聞いてからは、小さかった植村さんは、べっぴんさんになるため、そして気立てのいいお嫁さんになるため、トイレをピカピカにしていたようです。
昔は便所は暗く汚い場所で、恐ろしさや不浄といったまさに『陰』 の場所で、便所はこの世とあの世との行き来が出来る特別な空間であり、だからこそ便所神様をお祀りしてきたようです。『トイレをきれいに掃除すると、かわいい赤ちゃんが生まれる』 『お産が楽になる』 などの言い伝えもあります。
便所には2柱の女神様がいると信じられています。
乙女の姿をし井戸神様としても信仰される、水の神『水波能売神』(みずはのめのかみ)。
農耕とかかわる土の女神『埴山姫神』(まにやまひめのかみ)です。
この2柱の女神様、『伊邪那美命』(いざなみのみこと)が陰部を火傷し、それが元で死ぬ間際にお漏らしになった尿と糞からお生まれになったとされており、それが民間では『便所神』として信仰されてきました。神仏習合の経緯からか、2柱の女神様の他に、古くから信仰されてきた『便所神様』がいます。
それは『烏枢沙摩明王』(うすさ まみょうおう)という火の神、厠の神(便所の神=トイレの神)です。
烈火で不浄を浄化し清浄と化す力をもつとされ、心の浄化のみならず、日常のあらゆる不浄を焼き払い清める功徳があるとされています。そのため便所に祀られることが多く、厠の神(便所の神様=トイレの神様)として人々の暮らしを守ってきたと言われております。天台宗における密教の五大明王の一尊に数えられており、本来は火の神様ですが、人間界と天上界の間で、せまりくる怨霊や邪気を明王の 火炎によって、その不浄を清浄にするとされ、そのことが不浄の場所であり、あの世とこの世の行き来が出来る場所とされた便所の神様として崇められたようです。
このように、『便所神様』には、神道系と仏教系の神様がいらっしゃるようですが、いずれにしても、我々が毎日必ず使用するトイレをお守り になっていただいている神様たちに不潔な思いはさせたくないものです。 そして、家の中でもっとも不浄な場所であるからこそ、そこをいつも綺麗に掃除して ある家庭には、神様からのお恵みがあるのかもしれません。
(参考、引用)https://ak8mans.com/toirenokamisama.html